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気になることクロニクル

マーケティング、流行、ミーハー、映画、

「タイムシフト視聴率とCMジャンプ」が気になる。

#ビジネス

 ビデオリサーチがこの10月、従来のリアルタイム視聴率に、デジタル録画視聴による「タイムシフト視聴率」を足しあげた「総合視聴率」を初めてリリースしたのだが、ずいぶん時代遅れなので、気になる気になる。

 

①ドラマを録画で観る習慣

まず11月の記事を引用しよう。

録画視聴率ベスト30初発表 民放ドラマがNHK「真田丸」超え2016.11.19


関東地区で10月から測定を始めた「タイムシフト視聴率(録画視聴率)」と「総合視聴率」の上位30番組を初めて発表した。ドラマが録画の上位をほぼ独占し、中にはタイムシフト視聴率が従来のリアルタイム視聴率を上回った番組も。ドラマを録画で見る習慣が視聴者に浸透していることが、改めて浮き彫りになった。

【TVの潮流】録画視聴率ベスト30初発表 民放ドラマがNHK「真田丸」超え - 産経ニュース

 

この分析コメントにある「ドラマを録画で見る習慣が視聴者に浸透している」というのが、とてつもなく今さら感をかもし出すのだが、そんなことはないのだろうか。

ドラマってリアルタイムで見るものでは完全になくなって録画してみるものだと、もうここ数年(10年?)思い込んでしまっているので、あらためて「浸透しているようだ」と言われると、驚いちゃう。

私の周りの人たちはみんなとっくに録画派だが、ただし私の周りはハードワーカーが多くドラマの時間帯に食卓にいないという原因が考えられるため、会社関係者ではない主婦の友だちにも確認してみたところ、「ドラマは子どもを寝かしつけたあとに録画を見るのが主流」とのこと。そうなると逆に、だれがリアルタイムで観ているんだろうという感じ。

 

②リアルタイムのメリットとは

そもそもリアルタイムでドラマを鑑賞するメリットがひとつでもあるだろうか?

これがスポーツ観戦であれば、速報性・ライブ性に意味がある。いまその瞬間戦っているものに共感しながら参加する「同時性」に価値がある。

ドラマにもある面では「誰よりも早く放送されたばかりのドラマが観たい」という速報性への欲望があるのかもしれないが、冷静に考えてそこにスポーツほどの価値はないように思える。

 特にデジタル録画にはCMスキップという、おそろしく便利な機能があるため、もしドラマがリアルタイムで見られる時間帯にめずらしく家に居たとしても、多少見るのを遅らせて、「追いかけ再生」してみることさえある。それだとCMを飛ばせてドラマのストーリーが見やすいからだ。

 

③CMスポンサーの“飛ばされる”悩み

いうまでもないが、テレビ番組の製作費の大部分は、CMスポンサーからの広告予算で賄われている。だから視聴者である我々は無償でテレビ番組を観ることができていると言える。

CMスポンサーは、とにかく自社商品の認知を生活者に届けるツールとして、テレビCMに期待をしている。2010年代のいまもまだ、生活者へのリーチ(到達度)でテレビに敵うコミュニケーションツールは他にない。

ところが、デジタル録画シフトが進む現在、自社のCMを視聴者に鑑賞されずに飛ばされてしまうようになってしまうと、メーカー側が製作予算を支払う理由はなくなってしまう。そうなるとテレビという一大コミュニケーションは崩壊を迎えることになる。(もしくは無償提供が難しくなり、テレビも有料コンテンツになる。)

それほど、CMを飛ばせる技術というのは、従来のビジネスモデルを著しく損なう技術と言える。

 

④逃げ恥のインフォマーシャルへの挑戦

このあいだ放映が終わった「逃げるは恥だが役に立つ」では、ふたつの広告の仕掛けがされているのが目を引いた。

⑴ドラマの登場人物が宣伝をするCM

このドラマのあいだで流れる日産ジュークのCMには、大谷亮平がドラマと同じ役柄で登場する。

【日産 × #逃げ恥 】新ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』と「ジューク」のコラボムービー公開!コメント

毎回似たバージョンで繰り返されるだけなので見飽きた面はあったが、CMにはいる一本目がこのCMだとドラマの次のシーンなのかと錯覚し、「なにこれ」という興味をひく効用はあったように感じる。

⑵ドラマの中に商品を登場させる

ドラマの物語の中に、シャープのロボホンが登場し、話題をさらった。

恋ダンス披露、ロボホン話題 シャープにアクセス殺到:朝日新聞デジタル
TBS系の人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)の13日の放送で、「恋ダンス」を披露。ロボホンを紹介するシャープの動画サイトが同日夜につながりにくくなるほど、アクセスが殺到した。

昔からこのあたりのインフォマーシャルと呼ばれる分野の工夫は、小山薫堂なども挑戦していたし、すごい目新しいわけでもないが、久しぶりにきちんとドラマ内にプロダクトをいれこんできたなという印象を受けた。

CMが普通にだと見てもらえなくなる現状に対し、こういう対抗策の取り組みは、適宜挑戦しておくべきだと思う。

※古いけど、参考に小山薫堂の挑戦は下記など。

東京ワンダーホテル

ユニークな点は、インフォマーシャルと呼ばれる新形態のコマーシャル。インフォメーション+コマーシャルの造語であるインフォマーシャルは、物語の中でドラマのテイストを損なうことなく自然な形で商品に織り込まれるCMで、ストーリーをとぎれさせることもなく、視聴者にも好意的に受け入れられました。

http://www.vap.co.jp/smart/goods/1361936193219/

 

タイムシフトへの今後の対応策

最後に、いくつかタイムシフト視聴率に関する引用を転載しておく。

まずは産経。

■「総合視聴率」スタート 正確さ向上、録画分も集計

産経新聞 2016.10.25

VRは調査変更の理由について、「“テレビ視聴の分散化”に対し、視聴者の実態をより詳細にとらえたデータを提供するため」と説明している。背景にあるのは、単身世帯の増加や女性の社会進出、録画視聴の浸透といった変化だ。

ある曜日のある時間、家族がそろって1台のテレビにくぎ付けになる機会は減り、近年は視聴者が自身の生活に合わせて番組を選ぶ視聴スタイルが定着しつつある。テレビ局やスポンサーからは以前から、より精度の高い視聴データを求める声が上がっており、関係者の多くは調査変更で「データの正確性が向上する」(日本テレビの大久保好男社長)と歓迎している。(中略)

ただ、録画視聴はCMを飛ばすこともできるため、テレビ局がスポンサー側と広告取引をする際の基本指標は当面、リアルタイム視聴率のままだ。VRの26年の試験調査では、録画でも約5割のCMが飛ばされずに視聴されていたとのデータもあり、TBSの武田信二社長は「セールスにどう生かしていくかが次のテーマ。録画視聴時のCM飛ばしのデータをより精緻なものにし、スポンサーにも納得してもらえるよう交渉に臨みたい」と話す。

https://www.google.co.jp/amp/www.sankei.com/entertainments/amp/161025/ent1610250008-a.html

次に、東洋経済の特集。

■逃げ恥30%超!テレビ視聴率はこう変わった。ドラマは録画して見るのが多数派か?

東洋経済  2016年12月23日

前述の逃げ恥の場合、22日に明らかになった第10話(13日放送)の総合視聴率は30.4%だった。リアルタイム視聴率は17.1%、録画視聴率は17.3%。何と録画で見ている視聴率のほうが高かったのだ。

総合視聴率によって「録画による視聴まで加味しなければ、どれだけ番組が見られているかを把握できない」ということが明確になったといえる。逃げ恥の総合視聴率を見て、業界関係者からは「すごい数字。今まで若者のテレビ離れなんて言われていたけど、録画していただけで、ウソかもしれないね」といった感想も聞かれたほどだ。(中略)

録画視聴の場合はプレーヤーのCMスキップ機能によって、ほとんどのCMは飛ばされてしまうのではないか、とも言われていた。だが、ビデオリサーチによると、ドラマやバラエティなど、ジャンルによって傾向は異なるが「おおよそ半分の場合で、CMは見られている」という。中長期的にはリアルタイムだけでなく、録画視聴の視聴率も加味した評価へと変わっていくのかもしれない。

ビデオリサーチはスマホタブレットによる、ネット配信の見逃し視聴についても研究を始めている。ただ、全体における割合はまだ小さいだけに、データとして視聴率に織り込むかどうかは未定だという。http://toyokeizai.net/articles/amp/147911?display=b&_event=read-body

最後が、毎日新聞

■「総合視聴率」公表に大きな壁 スポンサーに警戒感
毎日新聞 2016年12月18日

今回の発表についてビデオリサーチは「タイムシフト視聴と総合視聴率を理解していただくというのが目的」といい、今後について「テレビ局が自局のデータを出すというケースがあるかもしれないが、当社が定期的に出していくかどうかは決まっていない」という。せっかく今まで視聴率の裏に隠れていた録画再生の実態が明らかになり、純粋に人気の番組がわかるようになったにもかかわらず、それが積極的に公表されないという事態に陥っている。
関係者によると、その裏にはスポンサー企業に警戒感があるためという。視聴率は人気のバロメーターであるとともにCM広告料を換算するための単価ともなっている。実際、CM広告料は視聴率1%に対しいくらという値付けだ。もし総合視聴率が単価となると、タイムシフト視聴率分が上乗せされるということになる。
しかし、録画再生時、視聴者の多くはCMを早送りにして見ているとみられ、レコーダーによってはCMを録画しない「CMカット」や、再生時に自動でCMを早送りする「CMスキップ」という機能を持つ機種も出ているほどだ。タイムシフト視聴率のうちどれくらいの割合が実際にCMを見ているかを示す正確なデータは今のところ出ていない。

 

従来から「視聴率」とは、「広告予算の基準値」になっているため、タイムシフト分も含めるべきかどうかは検討中という。

方法に関わらず「そのコンテンツがどれだけ視聴されているか」はまず測るべきである。計測なくして正しい議論はできない。その上で、CMが見られているかどうか、CMが興味を持たれるにはどうあるべきか。いろんな形を模索するフェイズにはいってほしいと思う。